「早合わせ」でいい「遅合わせ」でいい…こういった情報は、インターネットや書籍などにたくさんあります。でも、抽象的で、分かったようで分からない、そう感じられる方もおられると思います。実際、テンカラ釣りのアタリの取り方、合わせのタイミングは、釣り人ごとに言うことが違っていて、十人十色。それだけ感覚的なものであるといえるでしょう。
なかなか、理解することが難しい「合わせ」ですが、ここでは、一歩踏み込んで、具体的に、かつ実践的にみていこうと思います。

「合わせ」は魚が毛鉤をくわえている間に

「合わせ」とは、魚が毛鉤を加えた後、針を口に刺すための動作になります。つまり、合わせのタイミングについては魚が毛鉤をくわえている間に行えばいいことになります。早いのか、遅いのかは別として、魚がくわえている間に合わせればいいわけです。

くわえている間」については、ヤマメが違和感を感じてから0.2秒で吐き出すと言われたりしますが、釣り人の通説になりつつあるのが、ハリスにたるみがあれば違和感なく、くわえ続けているとうことです。事実、釣った魚の胃の中を見てみると、木の葉や小石など、餌以外のものが出てくることもありますので、正しい捉え方だと考えています。

魚を釣ることを考えた場合には、水中でハリスにたるみを作ることで、魚が毛鉤をくわえている時間、つまり合わせが決まる時間を長く確保することができるということになります。





魚が毛鉤をくわえた時の変化

では、魚が毛鉤をくわえた時に、どのような変化が起こるのかを見ていきましょう。これが、いわゆる、アタリ、ということになります。

以下に、どのような変化が現れるのかを、人間が気づきやすい順番に挙げていこうと思います。この順番は魚からすると無理をして捕食している順番になり、魚が食い損ねやすい順番ともいえます。

魚が水面から飛び出す

人間がもっとも気づきやすい変化で、テンカラ釣りで最も興奮する瞬間といえるでしょう。しかし、魚からすると、流れに向かって定位している場所から上に向かって飛び付くようにくわえることになります。毛鉤が水面に浮いた状態、極端に言うと、キャスティングして毛鉤が着水した瞬間などにみられる変化です。その行為自体は、魚にとっては危険を冒すことであり、活性が高かくなければ行わない捕食行動といえます。

水面が盛り上がる

これも上記と同じように、定位している場所から上に向かって、毛鉤へ飛びついた際の変化で、毛鉤が少し沈んでいるときに見られます。水面が盛り上がるということは、魚が毛鉤をくわえて反転した状態です。

水中で魚体がギラつく

こちらも毛鉤が少し沈んだ状態で見られる変化で、水中で毛鉤へ飛びつき、反転して元の場所へ戻る、あるいは石などの隠れ場所へ戻る際、魚体の側面から腹側へ光が当たって目に見える状態です。天候や水流によっては、上の「水面が盛り上がる」や、下の「ハリスがスッと動く」と同じように見える可能性もあります。

ハリスがスッと動く

この辺からは、冷静に目でとらえ、合わせを入れるのが難しくなってきます。この場合も、水面を割るほどではありませんが、魚が定位している場所から、毛鉤をくわえるために移動している状態です。ハリスが動くのは、毛鉤をくわえてから元の位置に戻る、あるいは隠れ場へ戻る際に現れる変化です。

ラインが止まる

人がアタリとして目でとらえ判断するのが最も難しいアタリです。餌釣り師にとっては、当然のことかもしれませんが、目印といえばラインとハリスの結び目程度、錘も無く、たるんだ状態で毛鉤を流すテンカラ釣りでは、判断が難しいといえます。
しかし、魚にとっては理想的な捕食行動といえます。魚が定位して泳いでいる場所からほとんど動かずに毛鉤をくわえている状態なので、毛鉤の流し方としても最も理想的な形となります。





合わせの動作はコンパクトに(2017/3/25追記)

次に合わせの動作についてです。簡単に言うと、持っている竿を後方へ振り上げて、魚の口へ針がかりさせることです。通常、毛鉤を振り込んだ後は、およそ前方45度くらいの角度で竿を保っていると思います。竿を動かす範囲はキャスティングのバックキャスト同様、頭の真上、12時くらいまでを目安にしましょう。
仕掛け全体が長い場合、また竿が柔らかい場合などは、竿をあおる幅を大きめにしないと、竿や仕掛け全体が合わせの動作を吸収してしまう可能性があります。また、仕掛けが短め、竿が硬めの場合は、より小幅に、優しく合わせの動作を行わないと、ハリスや魚へ強く合わせが効きすぎてしまう恐れがあります。
いずれにしろ、合わせの動作はコンパクトに行うという意識が重要です。魚が急に飛び出してくると、どうしても力が入って、大合わせをしてしまいがちです。「コンパクトに」、この意識が、強すぎる合わせを防止してくれるはずです。





タン・タンで合わせる!

ここでは、合わせのタイミングについて、音楽の授業のようなリズムで表してみたいと思います。タイミングと言ってしまうと、「合わせ」という一つの動作が対象になります。しかし、正確には、「アタリ」を感じ取ることもセットで理解をしないといけないはずです。
ここでは、「合わせのタイミング」について、上述の「変化(アタリ)」+「合わせの動作」二つのリズムと捉えて、述べていこうと思います。。

一つ目の音符は変化(アタリ)、二つ目の音符は合わせの動作と捉えてください。

理想の合わせ

理想の合わせ(タンタン) タンバリンをポンポンと叩く、小学校の音楽の授業を思い出してみてください。
魚が毛鉤を加えた変化が♩タン、そして合わせの動作が♩タン。
つまり、しっかりとアタリを確認して(タン)、慌てず強すぎず軽やかに合わせる(タン)。

悪い事例

びっくり合わせ ビックリ合わせです。文字通り、アタリに対してびっくりしてしまって、思わず竿をあおってしまう状態です。特に初心者の方には多い状態かと思います。私もいまだにやってしまいます。これでも釣れなくはないですが、気持ちとして合わせたというより、「合わせてしまった」という感覚に近く、あまり良い印象ではありません。


強すぎる合わせ フォルテッシモ、非常に強くです。分かりにくいですね。要は、強すぎる合わせのことです。これに関しては、ビックリ合わせと連動することもあります。いわゆる合わせ切れといった現象が起きてしまったり、ハリスが切れなくても、魚を勢いよく引き上げてしまい、うまく取り込めなかったり、無意味に魚を傷つけてしまうことにもつながります。






トライ & エラー!テーマをもって釣りをしてみる。

タイミングについては人それぞれの感じ方によって様々です。それゆえに、言葉にすると釣り人の数だけ表現があり、十人十色になります。しかし、それは人の感じ方の違いによるものであって、実際に渓流で起こっていることは、そこまで乖離していないはずです。ここまで述べてきたことは一つの目安としていただき、経験を積んでいきましょう。ただ単に経験すれば良いわけではなく、毎回テーマ目標を掲げて臨んでみましょう。それだけで、その日に得られる経験は意味があるものになるはずです。
例えば「今日は絶対に合わせない!水面付近の変化をただただ観察する」などです。極端な例ですが、分からないことや上手くいかないことに対しては、いろんな角度から試してみることは大事なことだと思っています。まさに、トライ&エラーです。





「テンカラがおもしろい理由」の、その向こう側へ

テンカラがおもしろい理由」、こちらの記事では、魚が飛び出す瞬間がおもしろい、そう述べました。これはまぎれもない事実で、病みつきになる瞬間です。しかし、テンカラ釣りの面白さは、ここでは終わりません

魚を掛ける、釣れたではなく、掛ける

掛けるとはつまり、ここで述べてきた合わせのことです。

一言で表すなら、してやったり、です。

魚が毛鉤をくわえた変化を感じ取り、合わせて魚をかける。思った通りに事が運ぶ達成感です。テンカラ釣りの面白さ、その向こう側にある、してやったり、ここまでくると、テンカラはもっと深みが増し、何よりもっと釣れるようになります。私も皆様と一緒に精進し、その向こう側へたどりつきたいと思っています。